「これは人権に関わる問題だ」
米国の現状と人種差別への抗議に関するZACK STEFFENのインタビュー
フォルトゥナ・デュッセルドルフは、人種差別や非合憲的に外国人を排斥する行為、さらに国籍、民族、宗教、性別、年齢、性的指向、障害などに基づいた全ての差別的な振る舞いや非人道的行為の撲滅を目指す。これはフォルトゥナの定款に明記されていることであり、GK Zack Steffenもこれと同じ想いを持っている。そんなアメリカ代表GKの母国では現在、George Floyd氏が亡くなったことをきっかけに、大規模な抗議デモが続発している。このデモ活動に参加している人々は、人種差別と白人警察官による黒人への暴力行為の撲滅を訴えている。このような状況を受け、日頃より反人種差別運動に積極的な取り組んでいるSteffenが、現状とその想いをインタビューで語っている。
Zack、遠い米国での現在の状況をどのようにして知りましたか?:
「もちろん私の母国で起こっていることについては、しっかりと認識しています。警察官がGeorge Floyd氏の首を膝で押さえつけている映像を見たときには、顔を殴られたような衝撃を受けました。そこには人種差別主義者が黒人の生活を無視している様子がはっきりと映し出されていました。これに抗議することは、人権を守るためには当然の行為であり、政治的な目的ではありません」
人種差別は、ここ最近の問題ではない:
「この問題はすでに何百年も前から、世界のいたるところに存在しているのが現実です。ヨーロッパ人が最初に米国に上陸し、国を占領したときにも、人種差別は実際にありました。彼らが黒人を奴隷として国に連れてきた後、厭わしい肉体労働をさせていたのも現実です。さらに、黒人には未だに平等な権利が得られておらず、また何百年も抑圧への対処がないのも事実です。これには人々も失望しています」
あなたが受けた人種差別を話してくれますか?:
「私は幸運でした。母親は白人で父親が黒人ですが、子供の頃は白人の義理の父親がいました。ですから”白人家庭”で育った妹と私は、ほかの黒人家族が日々抱えているような問題はそこまで多くなく、これは大きな特権でした。だからこそ今、人種差別を経験しなければならなかった人々のためにも、私が声を上げたいと思っています。私はお互いに思いやりがあり、我々が望むように扱ってくれる家庭で育ちましたが、子供にきちんとした教育をしない親がいることも事実です。これを契機にそういった状況を変えていく必要があると思っています」
あなたの家族の多くは米国に滞在していますが、家族のことが心配になりますか?:
「はい。彼らは元気に過ごしていますが、もちろん心配です。私の家族はPhiladelphiaの街から車で45分ほど離れた郊外に住んでいますので、現在混乱状態となっている街の中心部にいるわけではありませんが、それでもPhiladelphiaの警察が、平和を主張するデモ活動に参加した人々を攻撃している映像を見ました。彼らは暴力を誘発することで、平和を望む我々の目標を壊そうとしており、抗議がエスカレートした責任を、不条理にも我々に押し付けようとしています」
あなたは何かを変えるために、ソーシャルメディアでプロジェクトを開始しましたが、これは何を目指した計画ですか?:
「これは”Voycenow”というプラットフォームです。様々なスポーツのアスリートがここにコミュニティーを形成し、ディスカッションをする中でお互いの意見を交換しながらプロジェクトを促進し、有意義なアクションに寄付することを目的としています。私はこれまでの現状を変えるために戦っていきますし、我々がソーシャルメディアを通じて言及していることに対して、実際にしっかりと取り組んでいきたいと思っています」
このように明確な姿勢を示しているのは、米国でもあなただけではありません。サッカー米国代表キャプテンのMenga Rapinoeも強い意見を主張しており、NFLやNBAのチャンピオンチームも、大会の優勝後にホワイトハウスの訪問をやめましたが、米国アスリートによる政治への声明はどのような役割を持ちますか?:
「我々はアスリートとして、見られる立場であり賞賛される存在です。我々の試合を見るために、人々はお金を払いますし、我々はピッチ上で注目を集めることができています。そしてファンは、我々のピッチ外での様子を知るためにも、ソーシャルメディアで我々をフォローしています。だからこそ我々は、SNSを通じて、自分が誰であるのか、何に興味を示すのか、何のために生きるのか、何のために戦うのかといったことを明確に示していきたいと思います」
ブンデスリーガ仲間であるWeston McKennie、Jadon Sancho、Marcus Thuramによる先週末のアクションを、どう思いましたか?
「とても嬉しかったです。先ほど述べたように、ファンの方々はアスリートに注目を集めていますし、我々の発言を尊重してくれます。だからこそ我々アスリートが、発言力のない人や影響力のない人々のために立ち上がり、発言しなければなりません」
最後に、抗議運動についてもっと知りたいドイツ人や白人に対して伝えたいことはありますか?:
「白人は、黒人の立場にはなれませんし、直接的な関係がないため、強い想いのメッセージがない人も多いと思いますが、聞いてもらえるだけでいいのです。白人は、自身でそれを経験したことがなく、この先も経験することがないため、黒人の問題を100%理解するのは不可能です。これは明らかな特権です。それでも私は皆様に、人種差別の問題に対して積極的に立ち向かっていただけるよう、お願いしたいと思います。我々はピッチの外ではなく、ピッチの上で皆様からのサポートを必要としています。どうぞ我々と共に、この問題に向かい合ってください。なぜなら、この世界は憎しみに支配されるべきではないからです」